ラーメンとMMM

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── メディアミックスの「勝ち筋」は、どうやって生まれるのか

マーケティングの世界では、
「この施策は効いたのか?」
「次は何に投資すべきか?」
という問いが、日常的に繰り返される。

だが本当は、もっと根源的な問いがある。

そもそも、なぜ売れたのか。 そして、売れなかった理由は何だったのか。

この問いに正面から向き合おうとするとき、
私はいつも ラーメン のことを思い出す。


MMMとは何か

── 広告の「ない世界」を一度つくる

MMM(Media Mix Modeling)とは、
広告投下のない状態でも成立する経済活動を 仮想的に計算 し、
それを ベースライン として定義したうえで、

  • どの施策が
  • どの程度
  • どんなタイミングで

売上に 波及の波 を生んだのかを捉え、
さらに 次の波の起こし方 を探るための手法だ。

広告の成果を「点」で見るのではない。
時間軸をもった“波形”として捉える。

この発想こそが、MMMの核心である。

私はこの分析にあたり、
Googleが提供する訓練済みアルゴリズム
Meridian(メディリアン) を活用し、
ローカル環境で出力した波形をもとに、
顧客と検討を重ねている。


MMMは「勝利の方程式」ではない

── 再現性あるレシピ探しだ

MMMの営みを一言で言うなら、

最強のメディアミックスを探す、 レシピ開発の旅

である。

ただし、ここで重要なのは
「一度きりの勝利」ではない。

  • 毎回再現できるか
  • 条件が変わっても崩れにくいか
  • 調整の余地が残されているか

MMMが扱うのは、
勝ち続けるための配合 だ。


ベースのスープから考える

── すべては基礎で決まる

ラーメンづくりにおいて、
最初に決まるのは スープ だ。

同じように、MMMでも
まず定義すべきは ベースライン

たとえば、

  • 全地域共通で行っている
    チラシを軸とした販促活動
  • 広告がなくても回っている
    既存の営業活動

これらは、
油・タレ・ダシに相当する 土台 であり、
ここが不安定なままでは、
どんな施策も味が決まらない。


具材を変えると、味はどう変わるのか

MMMでは、
施策の組み合わせそのものが
味のバリエーション になる。

たとえば──

  • 高級食材
    • TV広告
    • YouTube動画
  • 隠し味のスパイス
    • TV & YouTube動画
    • VOC(口コミ・UGC)動画
  • 昔ながらの具材
    • VOC動画
    • 折込チラシ

これらを 拠点ごとに配合を変えて実施 したとき、
売上にどのような波が立つのか。

  • 入れすぎると重くならないか
  • 単体では効いても、腹落ちしないのではないか
  • 地味だが抜くと成立しない要素は何か

MMMは、こうした問いに
感覚ではなく、波形で答える


ラーメンは「ご当地」で進化した

── エリア特性という名の配合

ラーメンが全国に広がった理由は明確だ。

地域の特性を無視しなかったから

濃い味が求められる土地もあれば、
あっさりが支持される土地もある。

同じレシピをそのまま持ち込んでも、
必ずしも受け入れられるとは限らない。

これは、
各エリアで成立している営業活動も同じだ。

  • 商圏の特性
  • 生活者の行動リズム
  • 競合環境

こうした背景を踏まえずに
「全国一律の正解」を探すのは、
ラーメンを語らずして、
麺の太さだけを論じるようなものだ。


MMMとは、味を科学する営みである

重要なのは、
どれが一番派手かではない。

  • 何が土台を支えているのか
  • 何が効き、何が残るのか
  • 次に手を加えるべきポイントはどこか

MMMは、
勘と経験に頼っていた味覚を、 再現可能な判断に変える技術 だ。

配合性を科学すること。
それこそが、
真の「味の追求」なのだと思っている。


おわりに

ラーメンは、
偶然の一杯で語られるものではない。

積み重ねた試作と失敗、
そして土地ごとの工夫の先に、
名店は生まれる。

MMMも同じだ。

派手な一施策ではなく、
崩れにくい基礎と、調整可能な配合。

その地道な探求こそが、
次の一手を生み出す。

今日もまた、
スープの状態を確かめながら、
次の波を考えている。