──水は、山でいったん、立ち止まる。
冒頭ナレーション(共通)
水は、上から落ちてくる。
だが、日本列島では、
そのまま落ちてはこない。
山が、受け止め、
分け、
温め、
とどめ,
人の手に渡る形へと、
変えてきた。
今回のテーマは、「山」。
水が、
人間になる場所である。
Scene 1|山は、水を預かる
出羽三山|山形
– Sound & Visual –
(ドローンによる空撮)
雲海。
白く、厚い層。
その上に、山の稜線だけが浮かぶ。
地表の気配は、見えない。
音も、ない。
(ドローン、ゆっくり下降)
雲を抜ける。
森。
深い緑。
湿った空気。
– Sound & Visual –
山道。
一定の間隔で続く足音。
山伏の列。
法螺貝の音が、短く、切れる。
キャプション|出羽三山と水分(みくまり)
日本列島において、山は単なる隆起地形ではない。
天から降った水を受け止め、
流れを調整し、
各地へ分配するための構造体である。
「水分(みくまり)」とは、
水が分かれる地点を指す言葉であり、
そこには、水分神が祀られてきた。
– Sound & Visual –
苔むした岩。
細い水の筋。
勢いはない。
だが、止まらない。
– Sound & Visual –
精進料理。
胡麻豆腐。
白く、丸い。
湯気が、ほとんど立たない。
Scene 2|水は、怒らせて呼ばれる
龍神信仰|山の淵
– Sound & Visual –
森の奥。
光が届かない。
水面。
深い青。
底が、見えない。
– Sound & Visual –
水面に落ちる一滴。
波紋。
すぐに消える。
– Sound & Visual –
水面を見つめる人影。
緊張。
沈黙。
キャプション|水を動かすという発想
水は、待つだけでは来ない。
動かし、
揺さぶり、
怒らせることで、
循環を取り戻すという知恵が、
山には残っている。
フィナーレ|水は、山で人間になる
– Sound & Visual –
夜明け前。
山の尾根。
誰もいない。
– Sound & Visual –
岩から、
一滴の水。
落ちる。
– Sound & Visual –
苔を伝う水。
細く、
確実に。
– Sound & Visual –
谷の奥。
かすかな水音。
– 一瞬のモーション –
岩に溜まる水
苔に染みる水
白湯を口に含む動作
喉を通る感覚
温泉の湯気
消えていく指先
キャプション|水は、山で人間になる
山は、水を生み、
分け、
温め、
とどめ、
人が触れられる形へと変える。
日本列島において、
山とは、
水を信仰にし、
生活にし、
身体にするための、
最初の装置である。
──完(水の国ジパング)